神戸東灘区にあるパーソナルトレーニングジムのFujitaniです。このコラムでは「大胸筋のトレーニング」をテーマにお話します。
日本人男性のうち、何割ぐらいの方が胸板の厚みに必要性を感じているのか私にはわかりません。私たちは槍を投げて獲物を獲得する狩猟民族ではないですから、別に胸が厚くなくても全く困らないんです。
でも、なぜだか屈強なカラダに憧れを感じる男性が一定数、存在するのは確かです。
そんな想いを持つ方々のために胸板の主な構成要素「大胸筋」を鍛える方法、そして筋肥大させるコツをおすすめ最強トレーニング4選とともにご紹介します。
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≪ 目次 ≫
❶ そもそも、大胸筋を筋肥大させる方法とは?
筋肉はとても素直で、従順な性格を持っています。
重いものを持ち上げれば筋肉へ大きな負荷がかかって太くなり(筋力強化≒筋肥大)、長時間に渡って同じ場所をトレーニングすると長く働き続けられる筋肉になります(筋持久力)。
そして筋肉へ適切な休暇を与えると、以前よりもさらに頑張ってくれるようになるのです(超回復)。
逆に、自分にとって軽い重さを短い時間扱っていると何の変化も起こしませんし、連日過酷な労働を強いると、みるみる元気を失います。
例えば、自重トレーニングの代表「腕立て伏せ」を100回するメニューを組んだとしましょう。
「腕立て伏せ」は体重の一部を両足で支えますから、両腕への荷重は全体重の60~70%ほどにしかなりません。
体重60kgの方なら約40kg分が負荷となるわけです。
初めの1ヶ月は、何十年も運動から遠のいている方だと合計100回になるよう、何セットかに分けて実施したとしてもメニューを達成できないかもしれない・・・
でも、根気よく継続すれば、いつか必ず100回連続でできるようになります。
じゃあ、その時の胸板は超絶に厚いかと言うと「40kgの負荷に見合う程度の厚さ」しかありません。要するに、ベンチプレスで80kgを持ち上げる人と同じ大胸筋にはなれないのです。
もちろん、100回連続で行う持久力はありますが、筋持久力は「筋肉の太さ」と比例しません。
マラソン選手が40km以上も走り続けられるのに、往々にして瞬足である短距離選手よりも足が細いのはこのためです。
筋肉をしっかり追い込んだら、36~72時間の休養をその筋肉自体に与えることで「超回復」という現象を起こさせます。
「回復」に「超える」が合わさった言葉ですから、読んで字のごとく【元の状態よりも回復する=前より強くなる】という意味です。
しかし、超回復の過程でない筋肉は休ませる必要はなく、鍛えることができます。
毎日のように筋トレをして成果を上げている人は、しっかり計画を立てて、筋肉を順番にトレーニングしているのです。
☝ 日によって筋トレ部位を変えると、理論的には毎日トレーニングできる。しかし「肉体×精神」の不調和をきたさないよう、週に一度は完全休息日を設けたい。
また、休養は「休み」だけでは足りません。
適切な量の「栄養」を食事で補給する必要があります。
この分野については専属管理栄養士さんがアドバイスや具体例を紹介していますので、おすすめページのリンクを貼っておきますね。
➋ 大胸筋は一体どんな仕事をしているのか?
大胸筋は、全身に600個以上も存在する筋肉の中の1つ(厳密には左右で一組)です。
胴体の中でも特に鎖骨~肋骨、そして最下部は腹筋に至る部分から始まり、腕の上の方に集まって終わります。
そして筋肉の走行、すなわちマッチョの体表面に出るすじ(ストリエーション)の方向に沿って体を動かすと、狙った筋肉が優先的に収縮します。
さらに大胸筋は、解剖学的に上の図で示した「上部線維」「中部線維」「下部線維」の3つの構成要素に別けられます。
さっきの話を応用すると、例えば上部線維の走行に沿って腕を動かせば、大胸筋の上側が最も収縮してくれるわけです。
胸板の厚みを出すには、これらすべての方向に対してまんべんなく刺激を与えなればなりません。
➌ 大胸筋を強化する筋トレ4選
ここからはおすすめトレーニングを紹介していきます。
どの筋トレも概ね中級以上の方がメニューに取り入れている印象ですが、初心者の方でも各項で説明する注意点さえ理解できれば、チャレンジしてみる価値があるものばかりです。
その際は、軽めの重量からスタートして、感覚とフォームをつかむようにしましょう!
インクライン・ベンチプレス
男性なら誰もが一度は耳にしたことがある「ベンチプレス」の傾斜ありバージョンです。「中部線維」を中心に「上部線維」を鍛えます。
インクライン・ベンチプレス以外のおすすめトレーニングはマシン種目やストレッチ(軽重量)種目なので、そう簡単には大ケガしません。
したがってあっさりと解説しますが、インクライン・ベンチプレスはフリーウエイト種目であり、かつ高重量種目。このコラムを読んでくださっている方がケガをすると悲しいですから、しつこいぐらいに細かく説明したいと思います。
まず、インクラインベンチを背面部が地面に対して30〜40°程度でセッティングし、座って天井を見上げた際に目線のやや下(鼻もしくは口くらい)にシャフトが位置するよう配置します。
次に以下の4部位を床、もしくは座面に接触させます。
- ▷ 両足の裏
- ▷ お尻
- ▷ 両肩の高さに位置する背中
- ▷ 後頭部
これらはトレーニング中、常に触れた状態のままです。
そして、シャフトに記された中央から等しい距離にあるつるつるラインへ、実施者の腕の長さに応じて両側の人差し指(腕の長い人)~小指(腕の短い人)を順手向きに巻き付けるようにし、他の指もしっかりと握り込みます。
グリップ(握り)の基本は、親指を他の四指とは逆方向から巻き込む「クローズドグリップ」です。
親指をフックさせて持つ通称「サムレスグリップ」は、補助者なしの場合にとても危険ですから、限界まで追い込むときは止めておきましょう。
また、万が一に備えて両サイドの落下防止バーを適切な高さに合わせます。
シャフトを下す位置は、鎖骨内側の出っ張りから2~3cm下です。
この時、両肘はシャフトの真下に位置させます。肘の場所を誤ると、肩や手首に大きなストレスがかかりますので注意が必要です。
これが一番重要ですがシャフトを下す深さは、両上腕の角度が水平をほんの少し下回る程度に留めましょう。シャフトが胸に接触する深さは全く必要ありません。
というのも、世の中の半数以上の筋トレ愛好家は「ウエイトリフティング」と「筋トレ」、そして「高重量種目」と「ストレッチ(軽重量)種目」を勘違いしていると思います。
ウエイトリフティングは競技ですから、ルールが必要です。
したがって「バーが胸に当たる高さ」を最下点として取り決めていますが、その分、競技者の方は卓越した技術で胸郭(肺や心臓の入っているユニット)を押し上げ、肩甲上腕関節(狭義の肩関節)の負担を出来るだけ少なく済ませています。
そういった技術を持ち合わせない私を含めたほとんどの筋トレ愛好家は、絶対に無理をして接触させない方がいいんです。
さらに「ベンチプレス」は高重量種目です。
その理由は「シャフト」「両腕」「胸郭」の作る三角形が構造上とても強く、大きな外力に耐えられるからです。
したがって、両腕をつなぐ点(胸郭)が、点としての機能をなさなくなる、要するに「力が抜ける」深さまでシャフトを下すことは、建物で言えば「倒壊」を意味します。
ベンチプレスで肩を痛める方が多い原因は、このあたりにあるのではないでしょうか?
もしも、柔軟性の確保などを目的に大胸筋の伸長局面でトレーニングしたければ、バーベルよりもダンベルを使ったベンチプレスにしましょう。
ダンベル・ベンチプレスは左右の腕が固定されていないおかげで、胸郭に大きな自由度を与えます。
バーベルほどの高重量は扱えないかもしれませんが、トレーニング種目ごとに目的を持たせれば包括的で、合理的なプログラムを作れます。
デクライン・チェストプレス
このトレーニングは、大胸筋の「下部線維」を中心に「中部線維」を鍛えます。
デクラインとは、インクラインの逆でお尻よりも頭が下がったポジションを指す言葉です。なので、座面が直立タイプのチェストプレスマシンの場合、正しいネーミングではないかもしれません。
ただ、腕の運動方向に対しての体幹の位置がデクラインと同等なら、下側の大胸筋を収縮させられます。
いつものチェストプレスより5~7cm高めにセットした座面へ浅く腰掛け、背中にアーチを作って横から見た時に【肩-胸郭の中央-手首】を一直線とします。
首を痛めないよう、上の写真(右)を参考にして顎を引きすぎない頭の位置を保ちましょう。
本来のプレス系トレーニングの原則に反し、腰を浮かせた状態で行いますので、通常のチェストプレスで扱う重量の80%を越えない負荷設定を心がけます。
その分、フォームと効かせる部位へ集中し、多レップ(回数)で追い込みましょう。
ワンハンド・チェストプレス
さっきと同じマシンを異なる方法で使用し、大胸筋の「中部線維」の内側~外側までを強力に刺激します。
以下、左胸トレーニング時の説明です。
上の写真のように横座りし、マシンの背面へ左の広背筋を密着させます。体の向きが動作時に変わらないようにするため、右手で左の大胸筋を捕えます。すると、筋収縮も意識しやすいですね。
左肘を写真奥の方向へ引いた際、左肩がすくむと大胸筋が上手に使えません。意識としては肘を引き下げるようにし、プレスの時は押し上げるイメージを持ちましょう。
男性の場合、重量は10~20kgが適切かと思います。
ケーブル・クロスオーバー
ケーブル・クロスオーバーと言えば滑車を高い位置にセットし、引き下げて実施する方法が一般的(ハイプーリー)ですが、今回は滑車を低い位置にセットし引き上げる「ロープーリー・クロスオーバー」を紹介します。
これをマスターすると「上部線維」を単独で収縮させられるようになります。
写真のように片手で行う場合は、インクラインベンチなど捕まれる場所を用意し、動作中、体の面と軸を一定に保ちましょう。
滑車の位置は、実施者の膝くらいの高さにセットします。これよりも下げると三角筋に力が分散しがちです。
動作開始時、体の向きをマシンに対して斜めにします。そして、肘をわずかに曲げた状態で大胸筋をストレッチポジションにします。
軌道としては、グリップしている側の拳が同側の肩の真正面を通過させ、その延長線上、拳が体の真正面を横切る位置までスクイーズ(筋肉を絞り込む感じ)させます。
この時、ほとんどの人が体を捻ってしまいますので、意識的に向いている方向を固定するのがポイントです。ストレッチポジションでの切り返しは丁寧に行い、反動を最小限に抑えます。
重量は、片側5kgから最大でも20kg程度が妥当かと思います。
ベンチプレスに代表されるプレス系種目と比較して、ケーブル・クロスオーバーのようなフライ系種目は、ストレッチからスクイーズまで、コントロールされた動きを意識しましょう。
いかがだったでしょうか?
胸トレは高重量を扱える種目が多いため、肩の関節をケガしやすいです。肩のケガは他部位の上半身トレーニングはもちろん、脚トレであっても支障となります。
しかしながら、大衆のジムで筋トレをしている方にとって、みんなよりも浅いストロークで行うベンチプレスは恥ずかしく感じるかもしれません。
フリーウエイトをする時って、なんだか周りの目が気になりますよね・・・
でも、筋肥大させようとしているのに肩の痛みで思うようなトレーニングができず、結果として期待通りのトレナビリティ(効果)が得られないのでは本末転倒ではないでしょうか?
「胸トレの日」をお持ちの方は、これを機会に種目ごとの目的を見直し、完成度の高いプログラムを開発しましょう!
長文にもかかわらず、最後までお読みいただきましてありがとうございました。